子どもの熱で、また仕事を早退した日のこと。職場の人に「すみません」と頭を下げ、保育園に走り、看病して、夜は普段どおり家事をして。もう疲れて何も考えられないはずなのに、ひとつの言葉が頭から離れませんでした。「なんで、私だけ?」
夫も同じ正社員。同じように親なのに、なぜ謝るのも、抜けるのも、頭を下げるのも、いつも私なんだろう。共働きなのに負担がこちらにばかり偏ってしまう――今日は、その「なんで私だけ」の正体を、振り返ってみたいと思います。
「なんで私だけ」と思った、あの瞬間
保育園からの「お熱が出ました」の電話。なぜか、いつも先に鳴るのは私のスマホでした。お迎えの調整をするのも、病児保育に頭を下げて予約するのも、次の日の仕事をどうするか段取りするのも、気づけば全部私。
夫が悪い人だったわけではありません。ただ、夫のなかでは「いざとなったら妻がなんとかする」が当たり前になっていて、私のなかでも、いつのまにかそれを引き受けるのが当然になっていた。だからこそ、誰にぶつけていいか分からない「なんで私だけ」が、静かに溜まっていったんだと思います。
「わがまま」の声は、いろんな方向から飛んでくる
共働きのワーママが「わがままかも」と感じてしまうのは、いろんな方向から少しずつ言葉を浴びるからだろ思うのです。ひとつひとつは小さくても、積み重なるといろんな言葉が効いてきます。
- 職場から ―「また休み?」という空気や、しわ寄せがいく同僚への申し訳なさ
- 夫から ―「今は仕事が忙しい大事な時期だから」と、当たり前のように動いてもらえないとき
- 義母や親世代から ―「仕事辞めたら?」「まだ小さいのに預けてかわいそう」
- 世間から ― SNSやニュースで見かける「すぐ休むワーママ」えの不満
- 保育園から― 「もっと子供のことをみてあげて」という優しさからの声
これを四方向から浴び続けると、だんだん「もしかして、わがままなのは私のほうなのかな」と思えてくる。でも、ちょっと待ってほしいんです。それ、本当にあなたがわがままだからでしょうか。
でも、それ本当に「わがまま」? ― 数字が教えてくれること
なんで私だけ、の根拠は、ただのわがままなのではなく、数字で見ることができます。
総務省統計局の「令和3年社会生活基本調査」によると、6歳未満の子どもがいる世帯で、共働きの夫婦が1日に家事や育児にかける時間(家事関連時間)は、妻が7時間28分、夫が1時間54分。ざっくり4倍近い差があります。
しかも内閣府の男女共同参画白書によれば、日本はこの男女差が国際的に見ても突出して大きく、多くの国では2倍前後にとどまるところ、日本は5倍以上ともいわれています。つまり「なんで私だけ」というあの感覚は、あなたが大げさなわけでも、心が狭いわけでもなく、そもそも社会の側がそれくらい偏っているということなんです。
(出典:総務省統計局「令和3年社会生活基本調査」 / 内閣府「男女共同参画白書(令和2年版)」)
ずっと「私の段取りが下手だから」「私の要領が悪いから」こんなにいっぱいいっぱいなんだと思っていたけれど、そもそも背負っている量がまるで違ったんだ、と。自分の能力の問題だと思っていたものの正体が、実は構造の偏りだったと分かるだけで、自分を責める手をいったん止められます。
あなたが冷たいんじゃなくて、優しいだけ
「私だけずるいのかな」「わがままなのかな」と悩んでしまう人ほど、本当は周りを強く責めきれない人だと思います。誰かを責める代わりに、その矛先を自分に向けてしまう。それって、冷たいどころか、優しすぎるくらいです。
これだけ偏った構造のなかで、四方向から言葉を浴びながら、それでも頭を下げて、家のことも仕事もまわしてきた。そのこと自体が、もう十分すぎるほどの頑張りです。
だからまず、自分を責める前に、抱えているものを一つでも手放していいと思います。家事を減らせる仕組みでも、頼れるサービスでも、なんでもいい。ミールキットひとつ取り入れるだけで夜が変わることもあります。「なんで私だけ」を一人で背負い込まずにすむ方法は、ちゃんとあります。
あれこれ振り返ってみて気づいたのは、私が本当に欲しかったのは「あなたは正しい、夫が悪い」というジャッジではなかった、ということでした。
時短で早く帰ること、急に休むこと。それで誰かに負担がかかっているのは、自分がいちばん分かっています。だから、ただ責めたいわけじゃない。本当に欲しかったのは、「いつも回してくれてありがとう」「助かってるよ」の、一言だったんですよね。
夫の「今は仕事が忙しいから」も、職場の無言の空気も、刺さるのは、その手前にあるはずの感謝やねぎらいがすっぽり抜け落ちているから。やって当然、できて当然として扱われると、「なんで私だけ」はどんどん大きくなる。逆に言えば、その一言があるだけで、同じ状況でもずいぶん救われたりするんです。
共働きのあなたは、わがままじゃない
同じ正社員、同じ親なのに、負担はこちらに偏る。その偏りは社会や家庭の構造の問題であって、あなたのせいではありません。それでも毎日、家庭も仕事もまわしてきたあなたが、わがままなはずがない。「なんで私だけ」と感じたなら、それは責められるべき気持ちではなく、ちゃんと頑張ってきた人だけが抱く、正直なサインです。

あなたはわがままじゃない。むしろこんなに毎日、頑張ってるんだから大丈夫!

